コンピューターと言語の壁を見てきた
このサイトを運営する株式会社リボルバーは、クラウドCMS「dino」を通じて、企業の情報発信を支えるWeb基盤をつくってきた会社です。僕はリボルバーでCOOを務める西 宏司といいます。Webサービスや情報発信に長く関わってきましたが、コンピューターとの付き合いはそれよりずっと前からです。
僕が最初に触った8bitパソコンでは、日本語といえば半角カナくらいで、漢字すら扱えませんでした。その後、初めてMacintoshを買った頃、日本語版のOSは「漢字Talk」と呼ばれ、アメリカ本国のSystem 7とは別の環境でした。中国語や韓国語などは表示さえできず、海外とのやり取りでは使える文字を意識する必要がありました。
今から振り返れば、コンピューターそのものが言語ごとに分かれていた時代だったと言ってもいいかもしれません。
Unicodeが、世界の文字を同じ土俵に乗せた
そこから状況を大きく変えたものの一つが、Unicodeでした。世界中の文字を共通の仕組みで扱えるようになり、Webでも日本語、英語、中国語、韓国語、アラビア語などを同じ環境の中で扱うことが当たり前になりました。
かつて「その文字をコンピューターで扱えるか」というところにあった壁は、大きく取り払われました。そしてWebは世界中をつなぎ、誰もが同じWebの上で情報を発信し、受け取れるようになったのです。
それでは、情報そのものも世界中を自由に流れるようになったのでしょうか。僕は、そうは思っていません。
世界はつながっても、情報はまだ分断されている
たとえば、日本語でどれほど有益な情報を発信しても、その情報が日本語でしか存在していなければ、他の言語で情報を探している人には、なかなか届きません。
この問題は発信する側から見るより、受け取る側から考えた方が、ずっと身近に感じられます。
みなさんは普段、Webで何かを調べるとき、何語で検索しているでしょうか。
日本で暮らしている僕たちの多くは、まず日本語で検索すると思います。しかし世界では、英語、中国語、スペイン語、フランス語をはじめ、さまざまな言語で膨大な情報が毎日公開されていますよね。僕たちが普段目にしているのは、その中のほんの一部にすぎません。
英語の記事を見つければ、ブラウザで日本語に翻訳して読むことはできます。生成AIに読ませることもできます。それでも、その記事を最初から見つけられなければ、翻訳する機会そのものが訪れないと言えるでしょう。
Webは世界中につながりました。世界中の文字も、同じ仕組みの上で扱えるようになりました。それでも、情報の流通は今も言語によって分断されているのです。
「読める」と「見つけられる」は違う
翻訳技術の進歩によって、「たどり着いたページを読む」という意味での言語の壁は、かなり低くなりました。一方で、ページにたどり着く前の壁はまだ残っています。
日本語で公開されたWebページは、日本語で情報を探す人との接点を持ちやすい一方、英語や中国語、韓国語で検索する人との接点は生まれにくくなります。つまり、情報がどの言語で存在しているかが、出会いやすさそのものを左右すると言えるのではないでしょうか。
僕たちが変えたいと思ったのは、この部分です。9月1日に発表した「Language-Free」は、多言語対応を言語ごとに個別運用するものではなく、最初から発信の前提に組み込もうという考え方です。
発信する人は、自分の言葉で伝える。
受け取る人も、自分の言葉で受け取る。
発信者自身が英語版、中国語版、韓国語版と一つずつ作り分けるのではなく、自分の言葉で発信した情報が、その時点から各言語のWebコンテンツとして存在し、それぞれの言語で検索される。多言語対応を発信の仕組みそのものに組み込む。それが、僕たちの考えるLanguage-Freeです。
だから、いま“Language-Free”

こうした世界は、もっと前から理想として描くことはできました。ただ、実現するには翻訳やページ制作、言語ごとの運用に大きなコストがかかります。
その前提が、AI翻訳の進化によって変わり始めました。翻訳や多言語化を、発信の仕組みそのものに組み込める条件が整ってきたのです。
Unicodeによって、世界中の文字を同じコンピューターの上で扱えるようになった。Webによって、世界中の情報にアクセスできるようになった。そして次は、情報そのものが言語を越えて流通する仕組みをつくる。
僕たちは、その次の一歩を「Language-Free」と呼んでいます。
そして、この構想を形にするために開発しているのが、AI多言語発信プラットフォーム「prism」です。
次回は、prismが何を変えようとしているのか。そして、なぜ僕たちがprismを単なる「翻訳サービス」だとは考えていないのかについて書きたいと思います。
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